1/01/2010

川久保玲さんの言葉









季節の変わり目はいつもお店のSALEハガキがポストに溢れます。

どこのブランドも似たような文面のただの「SALEお知らせハガキ」が多い中、Comme des Garçons(コムデギャルソン)からは
The Quay Brothersというをアメリカの映像作家をとりあげたA3のアートポスターのような大きな郵便物が届きました。

僕自身、特にこのブランドの熱心なファロワーという訳ではないです。でも、この大判のDMひとつにも、やはりComme des Garçonsという会社の「意志」が見えます。

昨年の様々な試み、心斎橋にオープンしたComme des Garçonsのアートスペース「SIX」にしても、
H&M(エイチアンドエム)Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン),VOGUE(ヴォーグ)との一連のコラボレーションにしても、賛否両論はあることでしょうが、会社の姿勢として「攻め」であろうとする姿を見て、やはりこの会社のクリエーションする力はとても強くてらっしゃるんだなぁと思いました。

デザイナーのシンヤヤマグチさんが自身のBlogに、2009年12月7日付け繊研新聞に掲載されたという川久保玲さんのインタビュー記事を転載されています。

全文はこちら
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ここに掲載されている彼女の言葉は、「お守り」のように、心に留めておきたいと思いました。

以下、クリエーションとビジネスのバランスや今後のファッションビジネスの在るべき姿について言及している、気になった部分を抜粋して掲載します。


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(前略)

一つの洋服が何かものを言う時代ではないですね。襟がどうしたとかシルエットがどうしたとか、そういうことだけでは新しいことを表現できない時代になっている。

コムデギャルソンとしては服だけではなくて、会社の進み方自体が新しくなくてはいけない。
だから、いろいろトライしている。デザイナーが一つの服一点作ってってことじゃなくて、
会社全体がデザインされるっていうことです。

運営の仕方、売り方、ビジネスの方法論など、今までなかったことを実行しなければ、かっこいい新しい会社にはなれない。クリエーションしていないと思うんです。

(中略)


早くお金を手に入れるのがかっこよくて、安いものを着るのもかっこいい。


そればっかりになっちゃうともうおしまいですよね。


これでもかこれでもかって安くしているけれど、安いのはただ効率で安くしているだけなのか。

いずれにせよ、ある常識外で安いものは、それなりだから安いんですよ。

いいものはやっぱり時間とか苦労とかいろんなものがかかっているわけですから、安くはできないんです。単純な理論ですけれど。

安いことだけがいいって価値観も恐ろしい世の中です。
安く安くっていうので、大きな閉塞感に向かいつつある。
いいものは高いんですよ、簡単に言えば。

ファッションはアートではなく商業活動。だから売れなければならない。そこはバランスです。
そこは、精いっぱいビジネスをしています。イメージだけで仕事はしていないですよ。

たとえばイメージを強く優先する仕事と、もう少し売ることを優先する仕事とか、いくつもいくつも用意して、そのバランスを上手に取りながらですね。

かといって、コムデギャルソンとしてはいつも新しいことを実行したいですから、売るためだけというのは、なしです。売るんだけれども、そこに新しい売り方があって、会社としてクリエーションをしていると言える方法論でなきゃダメです。売り方もかっこよくないとダメです。それは人の気持ちを刺激するためです。

安いのがいいって言っても、みなさん刺激されたいし、刺激を求めている。人間ですから。

(中略)

流通では坪いくら売れるという方が勝ちですよ。完全にそうです。

おこがましいけど、「コムデギャルソンがここにあることで周りに少し元気を与えるという
目に見えない価値観で計算してもらえませんか」とまで言うこともありましたから。

それでも数字にならなければ全く考えてもらえない。
もがくだけでもいいかなって

(中略)

昔みたいに一つの服をクチュール的に作りこんでいればいいいという時代じゃないので、
もう少し視野を大きく、方法論を大きくです。

作るものが個人的な小さいものでもクリエーションといわれた時代ではないので、
今はもっと大きい物を作らなければダメだと思います。

今、デザイナー兼経営の両方ができている人は、そういうことができる人じゃないですか。
本当に大きいクリエーションをやりたければ、表現の材料は服そのものではないです。
もうちょっといろんな材料で表現しないと。それがこれからの人には大事かな。

そういう頭の構造、回路を持っている人はなかなかいないけれど。
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この的確な鋭さと強さが、Comme des Garçonsが今のように在り続ける理由なんですね。


正直、恐ろしいぐらいです。

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